それはわたしにもわからないけれど、だからこそ、なるべく大きなインパクトを残して、この美術室から卒業していきたいのだ。
けれど、息巻いていられたのも、ほんのわずかな時間だけだった。
美術室の窓の上辺は天井とそう違わない高さにあり、そこからカーテンが垂れ下がっているので、脚立のてっぺんまで登り、つま先立ちをしてやっと手が届くという高さにあるカーテンレールは、思ったよりも手強い。
何個かはカーテンとレールの連結部分を外せたけれど、ちょっと遠いけどいけるかも、という距離にある連結箇所を外そうとしたとたん……。
「やばっ! おおおお落ちるっ‼」
「ニナ!?」
「もう無理っ! 体勢立て直せないーっ‼」
足元から脚立がぐらりと傾き、そのぐらつきでバランスを崩して一気に不安定になったわたしは、百井くんが慌てふためく声を遠くのほうで聞きながら木の床に急接近していってしまった。
不思議なのが、落ちていく瞬間は、スローモーションのように見える景色がゆっくり移り変わっていくことだ。
ああ、わたし死んだ――そう思う時間が思ったよりたっぷりあったのが意外だった。
けれど。


