初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
だからわたしは、それに少しも気づいてくれない百井くんに対する悔しさも相まって、ついこんなにも可愛くない意地を張ってしまう。


「じゃあもうニナの好きにすればいい」

「いーだ! そうしますー!」


呆れた顔をし、大きなため息をついた百井くんが急に掴んでいた手を放したので、反動で脚立の重さが一瞬なくなる感覚を覚えた。

けれど次の瞬間にはしっかり重みが戻ったそれを窓際まで引っ張りながら、わたしは百井くんに向かって思いっきり〝いーっ!〟としてやる。


意地っ張りで可愛げがなくて、身の程知らずなヤツだと思われちゃっただろうか……。

ちらりと百井くんをうかがうと、わたしに背を向け、再び画材店の袋の中から画材道具を取り出し机に並べているところで、表情は見えなかった。

脚立に乗ってカーテンを外すなんていう危なっかしいことは、たぶん普通の女の子はしない。

それでもわたしは、百井くんに〝普通〟だなんていうありふれた言葉で片付けられる存在にはなりたくないし、卒業まで話せなくなっても、彼の中で〝ニナ〟でい続けたいと思う。

3週間で移った情なのか、それとも別のなにかなのか。