でも、そんなのは初めからわかっていたこと。
だからわたしは、絵を描く百井くんの姿を拝めない寂しさを払拭するようにテンション高めに声を出す。
「百井くんは、今日は絵を描く準備ね。わたしはカーテンの洗濯。作業分担で時短だね!」
百井くんが見せてくれた袋の中の画材道具は、正直なところ、わたしにはよくわからない。
プロさながらに道具を使いこなす美術部員たちなら、筆の一本、絵の具の種類、画用紙の紙質などについていろいろと話が弾むんだろうけれど、美術部員でもなんでもないわたしには、百井くんの好きな画材メーカーの名前を教えてもらったところで、「へぇ!」くらいしか言えないのだ。
「てかニナ、カーテン外せんの」
「んー? そこに脚立があるし、スカートの下にジャージも履いてるし、なんとかなるよ」
袋の中身を机に並べながら心配そうに尋ねる百井くんとは反対に、わたしはあっけらかんと答える。
ちなみに、洗剤は亜湖から借りるつもりだ。
亜湖が所属するテニス部は基本的に外で部活を行っている部なので、土や泥、転んだときに擦った草なんかでウエアが汚れる機会が多い。


