わたしの席の周りには、授業中にこっそり手紙を回したりする子は今のところいないはずだ。
というのも、新学期になってまだ日が浅く、しかも出席番号が下のわたしたちの一帯は、1年のときのクラスが見事にバラバラで、お互いにまだ手探り状態な部分が多い。
だから、先生に見つかるリスクを冒してまで、キャラが掴めていないわたしに手紙を回す意味がよくわからない、というのが今現在の状況だ。
現に、先生の目を盗んで周りを見回しても、紙を投げたかもしれない目ぼしい子らは一生懸命にノートを取っていて、早々に当てが外れたわたしは、紙を見つめたまま途方に暮れる。
まさか嫌がらせというわけでもあるまいし、この紙クズ、いったいどうすればいいんだろう……。
すると――カチャン。
わたしの右隣からペンが落ちた音が聞こえて、思わずそちらに目が向いた。
わたしの右隣は百井くんだ。
他のクラスメイトはペンが落ちた音さえ聞こえていないほどに授業に集中しているのに、百井くんとわたしだけは、どうやら違ったらしい。
『この紙、百井くんが投げたの?』
『知らね』
『どういうつもり?』
『……』