でもまあ、考え様によっては、旧校舎の美術室の掃除を手伝わされる羽目になったのだから、似たようなもののようにも思える。
……自分のせいだけど。
「仁菜、見かけどおりアホだから。脅されてることに気づいてないとか、ホントやめてね」
「それくらいわかるわ、わたしにも!」
「あら、そう?」
「むう……」
だからといって、このとおりの亜湖の毒舌を、このまま野放しにはしておけない。
百井くんに脅されているからではなく、亜湖の容赦ない毒舌を日々食らうせいで精神的に参ってしまったらどうしてくれよう、という話だ。
わたしは自分の席で、亜湖は自分の席から出張サービスでこんな話をしているわけだけれど、どうして隣の席に当人がいるのに話題にできているのかといえば、百井くんがしているヘッドホンが大きな役割を果たしている。
悲しい話、いつも大音量で音楽を聴いている百井くんにかこつけ、クラスはすでに、百井くん排除モードになってから久しい。
どうせ自分らの話し声なんて聞こえていないんだからなにを言っても平気だろ、という空気がクラス中に充満していて、正直居心地が悪い。