百井くんは確か隣の市から通っているとかで、たぶんうちのバカ親父のことはよく知らないのだろう。

本当に素直な気持ちで、ただ思ったことをそのまま口にしたような口調だった。

だけどそれが、わたしには痛い。


「それより、美術室には何時集合?」

「あー、放課後になったらできるだけ早く」

「了解。ありがとね、じゃあ!」


と、わたしは強引に話題を変え、ずっとおんぶしてもらったお礼もろくにしないまま、腰が抜けたことが嘘のように家に駆け込む。

写真は、わたしにとって鬼門だ。

触れたくないし、触れられたくない。


もしかしたら、百井くんがスケッチブックの持ち主を自分じゃないと言い張ることと少し似ているかもしれない。

でも、根本的に違うのは、百井くんが照れ隠しのためにわかりやすい嘘をつくのに対して、わたしは心から写真やカメラを好きだとは思えないことだ。

小さい頃の寂しさも、父のやらかした失敗も、カメラを手にすると思い出してしまって、どうしても憎々しい気持ちが先に立ってしまう。