「……それは、もしかして、百井くんを好きになる女子が現れるかもしれないとか、そういう……?」
恐る恐る尋ねると、けれど実結先輩はスッパリ言い切る。
「それもあるし、逆の場合だって十分考えられるよ。だってモモちゃん、可愛いもん。そのうえ、写真の才能まであるし。危ないのはむしろナツくんのほうだよ。うかうかしてたらモモちゃん取られちゃうよー」
「なっ!?」
百井くんが言葉にならない声を上げて実結先輩を凝視し、それから、はっとしたような顔をすると、今度はすがるような目をわたしに向ける。
……えー? そんな目をしなくたって捨てないってば。
百井くん、どれだけ自分に自信がないの。
それに、わたし思うんだけど、きっとこれ、実結先輩のちょっとした意地悪だよ。
からかう気持ち半分、本気でアドバイスする気持ち半分の、ちゃんと恋を終わらせられた実結先輩からのエールなんだと思うよ?
――そう。
実結先輩は、あのあと、その足で持田先生に気持ちを伝えに行ったんだそうだ。
1年前、絵を壊したのは、本当は自分だったことも告白し、その理由も伝えた。