焦って周りにきょろきょろと目を走らす百井くんに体で軽くトンと当たり、あははと声を上げて笑う。

うん、今のでなんだか吹っ切れたかも。

全国だろうと、どこだろうと、ふたりで晒し者になればいい。

ふたり一緒なら、きっと恥ずかしくはない。


「それ、私もモモちゃんの言ったとおりだと思うなー」


すると、聞き馴染みのある可愛らしい声が、わたしたちの背中にかけられた。

百井くんとふたり、同時に振り返ると、そこには、体のうしろで手を組み、ニコニコと笑顔を向けている実結先輩が立っていて。


「この際、ふたりがつき合ってること、クラスのみんなに言っちゃえば?」


なんて。

ちょっぴり悪戯な口調と表情で、そんなことを言う。

突然の提案に言葉が出ないでいると、百井くんとわたしの間に体を滑り込ませた先輩は、わたしたちの顔を交互に見ながら、さらに続ける。


「ナツくんだって、もうすっかりクラスに溶け込んだみたいだし、公言してもべつにいいと思うよ? だってふたりは私の恋とは違うでしょ? それに、私は3月になれば卒業するけど、ふたりはもう1年あるんだから。周りに余計な茶々を入れられたくなかったら、手っ取り早く公認のカップルになったほうがいいと思うよ? そのほうが、なにかと牽制になるだろうし」