「あそこニナんちなんだ」
「……んぉいしょ」と気合いの声を出し、少しずつ下がってきていたわたしを背負い直した百井くんが、ちょっと意外そうに質問を重ねた。
言い方は相変わらず一本調子だけれど、今ならなんとなく百井くんの感情的な部分も自然と頭の中で変換されていくから不思議だ。
「うん、百ノ瀬写真館だよ」
「だから写真部」
「……うーん、ただなんとなくだよ。特別写真が好きってわけでもないし、ほら、部活には必ず入らなきゃならないから消去法で。それだけ」
「へー」
わたしの家は、この町にひとつだけある写真館だ。
七五三や結婚・出産などの記念写真、家族写真を撮るかたわら、町にある幼稚園から高校までの入学式と卒業式、その他イベント事のときに学校から頼まれて写真を撮りに行っている。
今ではすっかり学校行事の写真を撮るほうがメインになっているけれど、昔は個人の写真を撮るほうが忙しいくらいだったと、高齢で引退したおじいちゃんから聞いたことがあった。
今現在は、おじいちゃんの息子であるわたしの父が百ノ瀬写真館を経営している。
写真に興味がないわたしとは違い、父は写真館の定休日になると、よく相棒の一眼レフカメラを持って意気揚々と出かけていく。


