でも、それもまた、仕方がない。
百井くんが〝いい晒し者〟と言ったとおり、この写真はまさに百井くん本人を撮ったもの。
しかもタイトルが【恋】ときたものだから、百井くんにとってこんなに恥ずかしいことはないだろう代物だ。
「でもこれ、一応、わたしも晒し者なんだよ?」
言うと、百井くんの顔がこちらを向く。
疑わしげに細められたその目からは、どうせこうやって全校生徒の前で飾られることなんだろ?という心の声が本当に聞こえてくるようだった。
でも、それだけじゃない。
「百井くんにはまだ言ってなかったけど、写真、学祭のあとに急きょ、べつのものに差し替えたの。ちなみに前のタイトルは【初恋】。実結先輩の絵を描く百井くんを撮ったものだったんだよ」
「……は?」
「構図は一緒。被写体ももちろん一緒。オレンジ色の光が差す美術室でひとり黙々と絵を描いてる横顔をこっそり撮りました、って感じも同じ。でも、ひとつだけ違う」
「……」
「ねえ、気づかない? たぶんこれ、わたしを描いてるときの百井くんなんじゃないかな。写真を撮った時期的にも、きっとそうだと思う。だから【恋】にしたの。それが全国まで行っちゃうんだよ。ほら、わたしだっていい晒し者でしょ?」