ああもう、こんなに想ってもらえる日が来るなんて、今日はなんて奇跡な日なんだろう。
「本当か?」と何度も聞き返す百井くんに、もうこれ以上はどうしたって言葉にはならないから、代わりにしつこいくらいに首を縦に振る。
そうしていると百井くんもようやくわかってくれたようで、相変わらず止まる気配のない涙を根気強く拭い続けながら、それでも我慢しきれない様子で言うんだ。
「このままだと、うざがられるくらい好きだって言いそうだから、そろそろニナの口で塞がせてもらってもいいか?」
「……うん」
そうして触れ合った唇は、ほんの数秒。
顔を離すと、ふたり同時に「真っ赤!」と吹き出して笑って、照れながら、お互いにぎゅっと体を抱きしめ合う。
百井くんから香る大好きな桃の匂いを体いっぱいに感じながら、でも、百井くんが先に白状してくれてよかったなと、こっそり思う。
だって、百井くんに口を塞いでもらわなかったら、わたしのほうこそ好きが止まらないところだった。
べつに、もったいぶるつもりも、出し惜しみするつもりもないんだけれど、百井くんのほうがわたしの好きより好きが大きいみたいな言い方をするから。