すると、今まで裏しか見えていなかったキャンバスが、唐突に表にひっくり返された。

見ると、キャンバス一面にはわたしの笑った顔が色鮮やかに描かれていて、百井くんといるときのわたしはなんて幸せそうな顔で笑っていたんだろうと、まざまざと見せつけられたような心地がした。


ああ、百井くんにはこんなふうに見えているんだ。

百井くんの目をとおして見えるわたしは、こうなんだ……。

しかも、実結先輩より断然、気合いが入ってるじゃない。

ああもう、こんなのを見せられたら、もう信じないほうがどうかしてるよ……。


「言っとくけど、教科書とかノートとか、もうずっとニナの落書きしかしてない。家でだって暇さえあればニナを描いてるし、オレの頭ん中、気持ち悪いくらいニナだらけだ」

「……百井くん」

「なあ、どうしたら信じてくれる? ニナに信じてもらうためには、なにが足りない?」


百井くんの瞳が不安げに揺れて、わたしの目からは、ぽろぽろと涙がこぼれる。

それを丁寧に拭ってくれながら、なおも不安そうに瞳を揺らし続ける百井くんに、愛しい想いが込み上げる。


「信じる。信じるよ。足りないものもない。これだけでもう十分だから……っ」