そんなわたしも、ふっと気が抜けたように笑う百井くんの顔を見ているうちに体の内側から熱が生まれて、あっという間に顔も耳も熱くなる。

その様子を見ていた百井くんは、何食わぬ調子で「赤くなんな、うつるだろ」なんて言うけれど、そんな百井くんだってもれなく真っ赤で、もっと言えば、先に赤くなったのは百井くんのほうだ。

うつったのはわたしのほうなんだから、被害者はむしろわたしで間違いないんじゃないだろうか。


「……だってあのとき、実結先輩、泣いてたよ」


もごもご言うと、百井くんが盛大なため息をつく。

前のことを今さら蒸し返すなよ、と言いたげなそのため息は、けれどわたしにとっては、この1か月、ずっと一番に気になっていたことだったから、その理由を聞かないことには、いろいろとスッキリしない。

だってわたしは、泣きながら美術室を出てきた実結先輩をちっとも追いかけようとしない百井くんにカチンときて、そのときの感情に任せて可愛くない告白をした。

好きなら奪ってよ、追いかけてよ、わたしを振って行ってよって。

そうしないと苦しすぎて自分が楽になれないと思ったのもあったけれど、一番は、ずっと苦しい恋をしてきた百井くんに、もう自分の気持ちのままに素直に行動していいんだよって言いたかったからだ。