たまらず目を逸らすと「ニナ」と名前を呼ばれ、おまけに「こっちを見ろ」と顎に手を添えられて有無を言わせぬ力で強制的にまた百井くんと目を合わせられる。
こういうところが暴君なんだよ、百井くんは……。
どんな絵を描いたのかは知らないし、さっきは口を挟んじゃいけないと思ってなにも言わなかったけど、ニナは基本アホとか普通にひどい。
のっぴきならない事情があったにせよ、何十分も暗い教室で待ちぼうけを食らわせるし、いざ美術室に来てみたらとんでもないことになっていた。
--それに、今だって、顎に添えた手をちっとも手を離してくれやしない。
実結先輩にしていたようにとか、そんな贅沢なことは言わないし望んだりもしないけど、わたしのことも、もう少し繊細に扱ってはくれないものだろうか。
仏頂面でじっと見つめられても、いろいろ困る……。
と。
「ニナが気づかせてくれたオレの本当の気持ち、ちゃんと説明してやるから、そんな不安な顔してんな」
さらに凄みを増した仏頂面を近づけた百井くんが、まったく面白くない、と言いたげに鼻を鳴らした。
そして、驚いてパチパチと目をしばたたかせるわたしをよそに、その表情を崩さないまま、百井くんは続ける。


