「ていうか、モモちゃん、なんてひどい言われよう……」
「まあ、そんなところが気に入ってるんですけどね」
百井くんのその言葉に、たまらず、といった様子で小さく苦笑をこぼした先輩からは、さっきまであんなに剝き出しにしていた敵意は、もうどこにもなかった。
先生に気持ちを伝える決心がついたのかどうかは、わたしにはわからなかったけれど、伝えるにしても、この先もずっと秘めたままにしておくにしても、もう感情に任せてこんなことはしないことだけは、わたしにもわかる。
先輩が一番苦しんで、もがいていたんだ、百井くんももちろんそうだろうけれど、わたしだって、そんな先輩を責める言葉なんて、なにひとつあるわけがない。
でも、ふと、百井くんはそれでいいのだろうかと思う。
まるでもう実結先輩のことは好きではなく、ただただ好きだった人の背中を押そうとしているかのようだった言葉の数々に、じゃあ百井くんが出した答えはいったいなんなんだろうという疑問が頭の中に浮かぶ。
百井くんは中学の頃から実結先輩が好きだった。
それはわたしが百井くんが絵を描きはじめるきっかけになった写真の撮影者【momo】だったことがわかり、彼の部屋で「……オレ、先輩が好きなんだ」という告白を聞いたときに、よりはっきりした。


