初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
そこでいったん言葉を区切った先輩は、しっかりとわたしの目を見据えてキャンバスを持つ手に力を込めた。

殴られる――。

すると、その恐怖に思わず後ずさるわたしの盾になるように百井くんがスッと前に出て庇ってくれて。

けれど、先輩の怒りの矛先は間違いなくわたしに向けられたままで、恐怖はなかなか拭い去れず、その背中の大きさや逞しさにすがりつくように、彼のブレザーの裾をきゅっと握りしめた。

そんなわたしの手を包み込むように取った百井くんは、実結先輩に向けてはっきりとした口調で主張する。


「先輩、いい加減にしてください。自分にできないことをニナがしたからって、嫉妬して八つ当たりするのは間違ってます。……ニナ、言ってました。自分の気持ちを押し殺して相手の幸せを願えるほど器用じゃないし、器も大きくない。身の引き方もわからないし、嫉妬だってするって。先輩とオレとの間になにがあるかなんて、わかるはずもないけど、そんなのはニナがオレに好きだって言わない理由にはならないって。先輩だって本当はニナみたいに自分の気持ちを伝えたいだけなんじゃないんですか? 自分にはその勇気がないから、ニナが羨ましいだけなんですよね」