あたかも本気じゃないと決めつけていたような口調とは裏腹に、実結先輩はこんなにも先生のことが好きで、ずっとずっと、自暴自棄になってしまいかねないところまで追いつめられていたんだ……。
それをひとりで抱えているのはどんなにつらかっただろう。
どんなに苦しかっただろう。
今ならわたしにもわかるその想いは、中学の頃から先輩のことが好きだった百井くんなら、なおさらだ。
先輩は『私がナツくんに逆らえないことを利用して、ナツくんのものにされるなら』なんて言ったけど、百井くんはそんなこと、たったの1回だって考えたことはなかったんじゃないのかな。
今だって、どうやったら実結先輩に後悔のない恋をしてもらえるんだろうって、そればっかりを考えているんじゃないのかな。
……ねえ、先輩。
先輩だって、本当はわかっているんでしょう?
百井くんはただ純粋に先輩のことが好きなだけなんだって。
長い時間を一緒に絵を描いてきた先輩なら、わたしなんかより、よっぽどわかっているんでしょう?
もし絵を壊したのが先輩で、百井くんがそれを庇ったことが事実だったとしても、恩着せがましいと思ったり、まして脅されているだなんて、今も本当は少しも思っていないんですよね?


