初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
そんな中、実結先輩は続ける。


「コンクールに出られなくなったのも、こんなところでひとりで絵を描かなきゃいけなくなったのも、全部私のせいじゃない! 私はもう、ナツくんには逆らえない。それなら、もっと上手に私を利用すればいいよ! なのに、なんでナツくんはそんなに欲がないの!? ……私、ナツくんが私のことを好きだって、ずっと前から知ってたよ。でも私は先生が好きだから、気づかないふりをしてたし、不毛な恋だってことは、私が一番よくわかってた。だから、私がナツくんに逆らえないことを利用して、ナツくんのものにされるなら、それもいいかなって思ってたんだよ」


とにかく、ずっとずっと、楽になりたかったの。

涙混じりの声で、実結先輩が訴える。


わたしは、このとき初めて、心が引き裂かれる音というものを聞いたような気がした。

それと同時に、いつか、実結先輩と同学年の美術部の先輩たちが面白おかしく話していた噂話が思い出される。


--『実結の点数稼ぎだったんじゃない? ほら、あの子、持田のこと好きだし』

--『そっか。でも持田、もうすぐ結婚でしょ? そしたら実結はどうするつもりなんだろうね』