「怖がりすぎて首絞めるって、どうなの」
「……やりすぎました」
「爪切れ。何本も引っかかれた」
「おっしゃる通りに……」
「明日からもニナは美術室」
「かしこまりました」
怖がりすぎて百井くんの首を絞めた挙げ句、背中で暴れまくってひっかき傷をいくつも付けたりしちゃって。
そして、明日からも百井くんと美術室です……って、え!?
「美術室!?」
「今、かしこまりましたって言った。耳掃除ちゃんとしてんの。明日からはニナも掃除」
思わず素っ頓狂な声を上げると、百井くんは、面倒くさそうな顔をしながらも彼にしては珍しく噛み砕いた長い台詞で説明してくれる。
ということは、明日からも恐怖の旧校舎……。
マジでか! すごい嫌だー。
けれど、今のわたしの立場では、言ってしまったものを取り消すことは到底できない。
百井くんは、散々迷惑をかけられたのにも関わらず、ちょっとの文句と、爪を切ること、それと美術室の掃除を手伝うことでチャラにしてくれようとしているのだから、むしろわたしは、ありがたくそのご厚意に甘えるべきだ。
間違っても、嫌だーと顔に出してはいけない。


