「わかった。じゃあ、学祭の前夜祭のときに聞かせてくれる? これからクラスも本格的に動き出すし、コンクールも学祭の写真展もあるから、放課後は部活でしばらく顔を出せないと思うけど、さすがに学祭の前日なら準備も終わってるはずだから。それに、そのほうが百井くんもゆっくり考えられるでしょ」
「1か月も猶予もらっていいのか」
「いいよ。その代わり、半端な答えだったら許さない」
言うと、百井くんの口元がふっと緩む。
「……なんか、ニナの告白で目が覚めたわ」
それから、そう言って観念したように苦笑をこぼした彼に「それはよかった」とわたしも笑って、今度こそ踵を返して美術室をあとにする。
百井くんはきっと、期限なんて設けなくてもきちんと答えを出すだろう。
だって、わたしが撮った写真を見て自分の手を人を殴るためじゃなく絵を描くために使いたいと決めて。
それで本当に絵を描きはじめちゃうくらい、はっきりと自分の気持ちを行動に移せる人なんだから。
半端な答えなんて出せるはずもない。
「次は百井くんが頑張る番だよ」
キィキィと所どころ音が鳴る廊下を戻りながら、そうつぶやいてカメラを撫でる。