運動部にはちょうどいいロードワークのコースになっているけれど、陶芸用のいい土が豊富に取れるらしく、その採取のためにしょっちゅう山に入っている美術部員のほうが、もしかしたら足腰が鍛えられているのかもしれない。

どっちにしろ、ほとんど活動実態のない写真部員のわたしには関係のないこと。

スケッチブックを手に取りざっと見てみたところ、所有者の名前がないようなので、同じクラスの美術部員を適当に捕まえ、あとはその人から持ち主に返してもらえたらそれで終わりだ。


幸か不幸か、担任の池のんこと池端先生から掃除用具入れの整理という雑用を押しつけられていたため、クラスのみんなが部活へ行ってしまった放課後の教室は、わたしひとりきりだった。

誰にも見られていなかったのは幸いだったけれど、それが逆に、地味に恥ずかしい。

でも。


「ちょっとくらいなら、いい……かな」


職員室に行って池のんへ報告するついでに美術室に寄ってスケッチブックを預ける--その前に、どんな絵が描かれているか見てみたいと思う気持ちが、ひとりきりの状況を後押しする。