でも、今年は少し違う。

芸術の秋と言うだけあって、11月にある写真コンクール。

学祭は、それに向けての前哨戦というか、腕試しというか……またちゃんと写真をはじめようと決めて撮った写真を展示するので、そこには自然と〝百ノ瀬仁菜〟が出る。

どれくらいの人が見に来るのか、また閑古鳥が鳴くのかはわからないけど、気持ちが入ったものを初めて見てもらう機会だから、今からけっこう緊張している。


といっても、あの日、百井くんが途中で帰ってしまって以来、あんまり写真を撮る気にはなれなくて、カメラを構えるものの、いつもどこか上の空なんだけど……。

--と。


「こら仁菜、ちゃんと話聞いてる?」

「うぇっ!?」


唐突に目の前に亜湖の怒ったような半分呆れたような顔が迫り、椅子から飛び上がると同時、素っとん狂な声が口から出ていった。

すぐに我に返って周りをきょろきょろと見回すと、教室はいつの間にか騒がしくなっていて、みんな席を立ってわいわいとなにか話している。


「学祭の準備。うちのクラスの模擬縁日だけど。仁菜は写真部だから、記念撮影したいっていうお客さんに写真を撮ってあげる係と、準備期間中や当日の様子を記録する係に決まったの。……てか、なんでそんな心ここにあらずみたいになってんの? 係決めの話し合い、もう終わったよ」