特に憧れているわけではないし、相手が百井くんってどうどうなんだろう?とも思うけれど、せっかくの漫画のようなシチュエーションなんだから、ここは百井くんにも気を利かせて「普通」くらいは言ってもらいたいものだ。
「っんだよ、クソ重めぇな」
「なにおぅ!?」
「ニナ、今日からダイエット」
「してるよバカっ‼」
けれど、どうやら現実は厳しいらしい。
乙女の理想は見事に打ち砕かれ、春休み中、あまりにぐうたらしすぎてスカートのウエストがきつくなり、焦ってダイエットを始めたことまで暴露してしまった。
でもまあ、初恋を捧げるなら百井くんとは正反対の男の子が理想のわたしとしては、百井くんになんと言われようが、別に構わない。
だけど、普通に傷ついたことに変わりはないので、わたしをおんぶしたまま器用に片手で美術室の鍵をかける百井くんの背中に、ちょっとした復讐のつもりで言ってやることにした。
「百井くんこそ、ヤンキーだったらヤンキーらしく、もうちょっと筋肉つけなよ。わたしごときでヒーヒー言ってたら、スケッチブックの彼女のこと、お姫様抱っこできないんじゃないのー?」
「……っ」


