あっという間に姿がなくなり、もう聞こえるはずもない百井くんに、今さらながらぽつりと本心がもれる。

最初からわかっていたことなのに、どうしてこんなにも胸が締めつけられるんだろう。

どうして足が竦んで動けないんだろう。

吐き出しようのない想いは日々溜まり続ける一方で、ただ胸の中にぎゅうぎゅうに押し込められていくだけ。

心から百井くんの恋を応援できないくせに、苦しいとか切ないとかつらいとか、片想いの感情だけが、毎日毎日、降り積もっていくだけだ。


もしかしたら百井くんは、もう何年も前から、こんな気持ちをひとり抱えているのかもしれない。

そう思うと、わたしなんてまだまだだと痛いくらいに実感させられる。

けれど、どれくらいの間、想っていたのかなんて関係なく思えるくらい、今のわたしの胸は痛くて痛くて仕方がなくて……。


「……百井くんの、バカ」


そう喉を震わせたのと同時、切ない想いが涙となって、はらはらと頬を伝い落ちていった。





結局、この日の呼び出しが本当に実結先輩からのものだったのかもわからないまま、夏休みは明けた。