結局、理屈なんかじゃどうにもならなかった気持ちにこれ以上抵抗しても無駄なんだと、おとなしく白旗を上げたわたしは、自分の想いを素直に認め、大事に大事に胸に持っておくことに決めた。

百井くんが実結先輩を好きなのは、どうしようもない。

実結先輩が先生を好きなのも、どうしようもない。

わたしが実結先輩を好きな百井くんを好きなことだって、全部全部、もう本当にどうしようもないことなんだ。

だったら、わざわざ諦める理由を探すこともないんじゃないか、って。

好きなら好きで、それでいいじゃないか、って。

ある意味、そうやって開き直れたから、今日もわたしは、こうして百井くんと出かけられているんだと思う。


「うはぁ、相変わらず絵を描く百井くんは絵になるなぁ」


数十メートル歩いたところで彼のほうを振り返ると、楓の幹に背中を預け、一方の足は地面に投げ出し、膝を立てたもう一方の足の上にスケッチブックを置いて鉛筆を走らせる姿が見えて。

そう感嘆の声をもらすと同時、無意識に覗き込んでいたファインダーでパシャリ、これもまた無意識にシャッターを切っていた。