「じゃあ、適当に写真撮ってくるね。百井くん、だいたいここにいる?」

「ああ、木陰だし景色もいいし、ここで描いてる」

「オッケー。じゃあ、またあとでね」

「おー」


それから一時間半ほどして、かしの木公園で昼食をとったわたしたちは、それぞれ思い思いに行動することにした。

学校から生徒がいなくなるまで30分。

駅へ向かう途中のコンビニでお昼ご飯を調達し、15分の移動時間を経て着いた公園で、まずは適当になにかお腹に入れて。

そうしてスケッチのポイントを探すこと数分。

中央に噴水がある池に対面するようにある大きな楓の木の下で腰を下ろした百井くんと別れたわたしは、重いカメラを首からぶら下げ、まずは池の反対方向に向かおうと反時計回りに動きはじめることにした。


百井くんへの想いが全然断ち切れていなかったことを実感してからというもの、彼に会ったり話をしたりするのが怖くもあったけれど、どうやら、それをも軽く飛び越えてしまうが〝好き〟という気持ちらしくて……。

後半の夏期講習が始まって百井くんの顔が見られるようになれば、それだけで嬉しくて胸がキュンとなったり、旧校舎の美術室で他愛ない話をすれば、それだけで幸せな気分になれたり。