こちらに向かってにっこり笑いながら手を振る亜湖に手を振り返しながら、心の中で何度もお礼を言う。
協力できるところはする、という言葉も嬉しかったけれど、なにより嬉しかったのは〝親友なんだもん〟という一言だった。
毒舌だし、厳しいし、テニス部に顔を出せば普通に雑用を押し付けてくる暴君なところもある。
頭の出来も、運動神経の出来もまるっきり違う。
でも、些細な気持ちの揺れに気づいて少しでも心を軽くしてくれようと声をかけてくれたり、忠告を無視するようなことを考えていたのに最終的には応援してくれたり。
わたしと同じように亜湖もわたしのことを親友だと思ってくれているのが、泣きたいくらいに嬉しいなんて、わたしはなんて素敵な友人を持てたんだろうか。
「そっか、学祭か……」
つぶやいて顔を上げると、今までの教室がまったく違うものに見えた気がした。
もし、もし学祭で、百井くんが本当は不良でもヤンキーでもなく、ツンデレが可愛くて、驚くほど純粋で、自分たちと同じ普通の男の子なんだということをクラスのみんなにわかってもらえたら。
……そのときは、百井くんを想うわたしのこの気持ちにも、少しは自信がつくかな。


