周りにどう思われても話したかったら話せばいいし、一緒に帰りたかったら、人目を避けたがる百井くんの制服のネクタイでも引っ張りながら、みんなの前を堂々と帰ればいい。

それなのに、なぜできないんだ、わたし。

今もこんなにも好きなのに。

諦めようとしても全然諦められなかったのに。

……こんなんじゃ、本当に百井くんが好きなのかどうかさえ、自信がなくなってくる。


「はぁ」


こっそりとため息を吐き出して、百井くんの横顔から黒板に目を移す。

ほんと、考えれば考えるだけ、百井くんが実結先輩を想う気持ちと、わたしが百井君を想う気持ちは、月とスッポンくらい雲泥の差だなぁ。

きっかけを待っていたって、そもそも、そのチャンスだっていつ訪れてくれるかもわからないっていうのに、わたしはいったい、なにをしているんだか……。

きっかけがなかったら、自分で作ればいいだけ。

チャンスがなかったら、わたしがどうにかすればいいだけの話じゃないか。


「はぁ……」


もうひとつため息をこぼし、おざなりになっていた板書をノートに書き写しながら思う。

ただ待っているだけだなんて、なんてわたしは大バカ者なんだろう、と。