百井くんって、案外寂しがり屋さんなんだな、きっと。
夏休み中もここに来て絵を描き続けていたのには驚かされたけれど、学校でわたしを見かけても声をかけなかったのは、たぶん自分と親しげに話しているところを誰かに見られたらわたしに迷惑がかかると思っての、嬉しいような、切ないような、そんな彼なりの優しさだったんだろう。
相変わらず高圧的で有無を言わせぬ暴君じみた返しをされたものの、それらは全部、百井くんの寂しい気持ちの裏返しなんだってわかってしまった今は、ただただ目の前の百井くんが可愛く見えて仕方がない。
「ほら、スマホ出して」
「……おう」
連絡先の交換をして、やっぱりまた恥ずかしそうに顔を背ける百井くんにぷっと吹き出して笑って。
「んだよ、コノヤロー」とチッと舌打ちされながらも、それもまた可愛くて、どうにも笑いを収められなかったり。
「あ、ねえ、いつなら誘っても大丈夫?」
「オレ、だいたいいつも暇」
「おっけー。じゃあ、お盆を挟んで後半の夏期講習が終わったら、ってことにしよっか。念のために聞くけど、都合いい?」
「だから暇だって言ってんだろーが」