鬼の形相は至近距離でも変わらず鬼のままで、なにがどうなって百井くんの逆鱗に触れてしまったのか、さっぱりわからないわたしは、ただただ縮み上がるのみだ。
誘ってこないわたしが悪いって、どういうこと?
ていうか、百井くんはなにを誘ってほしかったの?
思わず「ひいぃぃ……!」と悲鳴を上げながら、目を力いっぱいつむる。
怖い怖い、百井くん怖い!
「……ニナが誘ってくれねーから、どこにも出かけらんねーじゃねえか」
「へ……?」
けれど、ふいに落とされた百井くんのその台詞に、今までの恐怖心が嘘みたいになくなっていった。
恐る恐る目を開けて彼の顔を見ると、まるで寂しがり屋な子犬のような目をしていて、今までの鬼の形相はすっかり影を潜めている。
目が合ったとたん、すごい勢いで顔を背けられてしまったけれど、耳まで真っ赤なのは隠しきれていないし……。
となると、今の言葉をかみ砕いて解釈すると、もしかしてこういうことなんだろうか。
「……え、えーっと、それはつまり、わたしが遊びに誘ってくれないから拗ねてると、そういうこと?」
「う、うるせー……」


