急に気持ちがぶり返してしまったらどうしようとか、勢い余って告白しちゃったら百井くんとは終わるなとか。
そういうことを考えはじめたら、なかなか寝付けなくなってしまって、今日は若干寝不足だった。
でも、こうして普通に言葉を交わせると、安心したと同時に自信がついてくる。
ああ、ちゃんと失恋できたんだな、これからも百井くんとはこんな感じでやっていくんだなと思えて、自分なりに前に進めていることを証明できた気持ちになる。
百井くんはなにも知らなくていい。
ただ真っすぐに絵を描き続けていれば、それだけでわたしは百井くんに失恋できてよかったって思えるから。
そうして、いつもの定位置――百井くんが絵を描く正面の長椅子に座り、足をぶらぶらさせていると。
「ニナが誘ってこないのが悪い」
「――どわぁぁっ!」
鬼の形相で急に椅子から立ち上がり、つかつかと歩いてきた百井くんが、鼻先と鼻先がこすれ合うんじゃないかと思うほどの至近距離でいきなりそう告げた。
わたしはもちろん、思いっきりびっくりして後ろに仰け反り、背後にある卒業生の作品の何個かをガタガタと落としてしまう。


