「あはは、うん、それはあるかもしれない。百井くんにとってのわたしは〝ヒーローで恩人〟だっていうし、そのおかげでまたカメラを始めるきっかけをもらったし。百井くんとわたしには、きっとこれがベストの形なんだよ」
わたしも笑い返しながら、亜湖に大きく頷く。
けして大げさなんかじゃなく、あれは本当に奇跡だったと思う。
自分が撮った写真で、誰かの心が動く――。
今の〝絵を描く〟百井くんを作ったのはわたしなんだって知れただけで、なんだか胸の奥がぽかぽかと温かいもので包まれる。
幸せだと思える。
好きになってよかったって思える。
だから、百井くんとは、ずっと友達だ。
「そっか。仁菜がそう思ってるんなら、あたしは何も言わないよ。失恋はどれもツラいけど、なんていうのかな……前向きな気持ちで終われる失恋? っていうの? 仁菜にとってそうであれば、あたしは満足だからさ」
「うん! ありがとう、亜湖。今はまだちょっとつらいけど、もちろんそうだよ」
「うん、なら、それでいい!」


