「……でも仁菜、気持ちを隠したまま百井と友だちを続けるのは、仁菜が苦しいばっかりなんじゃない? 百井のおかげで仁菜がまた写真を始めたことは、すごくいいことだとあたしも思うよ。だけど、百井は仁菜のことをなんとも思ってないわけでしょ? かといって、ずっと好きだった先輩に告白するのかっていうと、そういうわけでもないみたいだし……。仁菜ばっかり苦しいとかさ、あたし、けっこうだいぶ百井に腹立つんだけど」
すると、歩き出しながら亜湖が拳を作った。
百井くんに対して〝男らしくない〟という不満の表れであるのだろうそれは、亜湖がどんなふうにわたしのことを思ってくれているのかという彼女の本音がうかがえて、自然と頬が緩む。
「まあまあ、そう言わないでよ。好きな人がいる人を好きでい続けると、きっと告白するのに相当の勇気と覚悟が必要なんだと思うんだよ。わたしは自分が傷つく前に諦めた腰抜けだけど、百井くんはたぶん、そういうんじゃないと思うんだ」
「そうなの?」
「うん。うまく言えないけど、好き云々の前に、もっと違うところで別のつながりがあるから、告白〝できない〟んじゃなくて〝しない〟んだと思う」
「……そういうこともあるの?」
「うん、まあ、ただの勘だけどね」


