「――とまあ、そういうことで、くれぐれも羽目を外しすぎないように。夏期講習もあるから、忘れずに登校するんだぞー。では、解散」

「やったー、夏休みだ!」

「夏期講習とかマジ休みたいー」


それから約一ヶ月、夏休みに入るのと同時に梅雨が明けた。

終業式を終えていったん教室に戻り、担任からの連絡事項を聞いて解散になったクラスでは、クラスメイトたちがめいめいに声を上げながら帰り支度をはじめている。


あーあ、百井くんとは夏期講習まで会えないのか……。

依然、彼と連絡先の交換さえしていないわたしにとって、去年は苦痛以外の何物でもなかった講習も、今年はすこぶる待ち遠しい。

それに、さっきのホームルームで二学期になったら席替えをしたいと声が上がり、担任もそれを了承したから、実質、百井くんの隣にいられる時間も残りわずかになってしまったりなんかして……。


40人近くのクラスなら、また百井くんの隣の席になれる確率なんて、とても低いだろうから。

夏休みになって嬉しい反面、心は今一つウキウキと弾けきらない。

そういうわけで、間接的に振ってもらって恋心に蓋をすることにしたわけだけれど、実際にはそう簡単に気持ちを切り替えられるわけもなく、このとおり、わたしの想いは現在進行形でくすぶり続けたままだ。