あれだけ写真をきらっていて、ずっとカメラに触ってもいなかったんだから、自分の写真を眺めているわたしを見たお母さんが驚くのも無理はない。

でも、百井くんがわたしの写真に影響を受けたように、わたしも百井くんに影響を受けてしまったんだから、もう仕方がない。


「今日、晩ご飯をごちそうになった友だちが、わたしのことを〝ヒーローで恩人〟だって言ってくれてさ。きっかけは、わたしがお父さんのあの大失態を話したことだったんだけど、そしたら急に、晩ご飯食ってけ、って」

「……ヒーロー? 仁菜が?」

「ふふ、うん、そう。笑っちゃうよね、ヒーローで恩人だなんて。でも、隣の市のカフェで写真展をやってるときに偶然この写真を見て、今までの自分から変わるきっかけをもらったんだって。だからもう、写真なんて撮らないって意地を張ってばかりもいられない気持ちにさせられちゃって……」


ああもう、恥ずかしいなぁ。

そう思いながら再びにへらと笑うと、お母さんも目を細くして笑っていて。


「あ、でも、お父さんにはまだ内緒にしててよ。なんか恥ずかしいし、またゴツいカメラを押し付けられたら、たまんないから」

「ぷっ、それもそうね」