「そうだったの。早とちりしてごめんね、夏樹。モモちゃんも」
「いえ」
「肉食わせてくれたら、それでチャラにしてやるよ」
百井くんの切り返しに、ふっと申し訳なさそうに微笑したお母さんは、
「今日は焼き肉にしたから、お肉いっぱいあるわよ。モモちゃんもたくさん食べていってね」
そう言って、一足先に部屋を出て階段を下りていった。
晩ご飯の用意ができたから呼びに来てくれたんだろうけど、それにしても、とんでもないタイミングでドアを開けられちゃったな……。
チラリと百井くんを盗み見ると、まだ叩かれた部分を手でさすっていて。わりと本気の鉄拳だったんだろう、なかなか痛そうで、胸の奥が痛くなった。
「……なんか、ごめんね」
「いや。あの人、ああいう性格だから、早とちりすることも多いし。荒れてた時期のオレも知ってるから、ただ心配だっただけ」
「うん、ならいいんだけど」
「ニナが気にすることじゃない」
ありがとう、とヘラリと笑えば、百井くんもふっと口の端を上げて笑う。


