初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
すると百井くんは、照れ隠しからか、口元を覆っていた手を顎にかけると、少し考え込むような仕草を取って、

「あー。そうだな、ニナはヒーローで恩人。ニナのあの写真がなかったら、オレは今も、この手を人を殴るために使ってたと思う。先輩は……やっぱ、初めて人を好きになることを教えてくれた人。でもそれも、ニナがいなかったら――って、なに言わせんだテメェ!」

途中から自分がものすごく恥ずかしいことを言わされていると気づいたらしく、今度は本気怒りの真っ赤な顔で握った拳をワナワナと震わせた。


「こら夏樹、女の子になんて口の利き方してるの!」


――スパーン‼

けれど、久しぶりに聞いたヤンキー口調も束の間、ちょうど部屋のドアを開けたお母さんに頭頂部をクリティカルヒットされ、百井くんは悶絶。

わたしは呆気に取られて目と口をがっぽり。


「ほら見なさい、モモちゃん泣いてるじゃない! あんたって子は……!」

「ごごごご、誤解です! 百井くんはただ、わたしに絵を見せてくれただけで!」

「モモちゃん、うそつかなくていいのよ。夏樹の絵で泣けるわけないじゃない」