顔を真っ赤にさせてうつむいた百井くんが、逡巡したのち、ようやく白状した想いを聞いて、わたしはひとり、この恋に蓋をすることに決めた。
もともと無理な恋はしたくなかったし、告白するつもりもなかった。
百井くんが好きなのは実結先輩なんだって前から気づいてもいたし、そもそも、百井くんと先輩の間には、わたしなんて入り込む隙もないくらいの先輩後輩としての時間がある。
無理だったんだ、最初から。
ヒーローなんて言われた時点で、もう〝女の子〟でもないし。
それ以前に、扱いも全然違うもの。
顔から下だけのモデルとか、こうして自分の部屋に連れ込むとか。
実結先輩とだったら、好きすぎてふたりきりにだってなれないんだ、絶対。
「ねえ、参考までに聞かせてほしいんだけど、百井くんにとっての先輩とわたしって、なに?」
相変わらず耳まで真っ赤にして照れている百井くんに尋ねてみる。
もっとはっきりさせないと、と思う。
わたしがそのラインを見誤らないように、ちゃんと〝友だち〟としてつき合っていけるように、百井くんのその口で、とどめを刺してほしい。


