そしてそれは、中学生の百井くんに恋心を抱かせるには十分すぎる出来事で……。
それから彼は、ずっと彼女に恋をしているんだ。
先輩を追いかけて同じ高校に入るくらい。
絵を壊したせいで、ひとり別室で部活動を続けなければいけなくなっても。
もうコンクールに絵を出せなくなっても。
先輩がほかの誰かに恋をしてしまっても――。
もしかしたら百井くんに絵を教えたのは実結先輩かもしれない、と思わないわけじゃなかった。
自分で自分の傷を抉るようなことは、できるならしたくはない。
でも、ここで確かめておかないといけないって。
百井くんにとってのわたしはなにで、実結先輩はなんなのか。
百井くんの表情を見たら……というか、あのスケッチブックを開いたときから答えなんてわかりきっていたけど、これ以上百井くんのことを好きになってしまうと、わたしがつらいから。
だから。
「そろそろ、わたしに言ってくれてもいいんじゃない?」
「え」
「百井くん、実結先輩のこと、好きなんだよね?」
「……、……うん、そう。オレ、先輩が好きなんだ」
「あはは、やーっと認めた!」


