「これとか、すごくよく再現されてるね。前のページと急にタッチが変わったのは、誰かが教えてくれたからなの？」
百井くんの絵にすっかり心奪われ、いつの間にかわたし自身がページをめくっていた。
そこでふと気づいて尋ねてみると、彼は照れくさそうに鼻の頭を掻きながら言う。
「ああ、これは、実結先輩に教えてもらった描き方。あんまりひとりで絵を描き続けるから、見兼ねて教えてくれたときのもの。今までは思うように描けなかったものが急に思い通りに描けるようになって、ほんと驚いた」
「……そっか。すごくきれいだね」
「だろ。先輩、ほんと上手いから、どんなことでも勉強になる」
「うん、絵を見てたら、そうなんだろうなって思う」
自分の写真が絵で再現されたものを〝きれい〟だと言うなんて、少し変かもしれない。
でも、本当にこの絵から印象ががらりと変わって、今までは粗削りだったものが知識を得て躍動しはじめたような。
そんな印象を受ける。
百井くんはきっと、実結先輩からたくさんのことを学んだんだろう。
絵筆の握り方、力の強弱のつけ方、絵の具同士を混ぜ合わせて新しい色を作り出すときのコツや、水の分量、描くときの姿勢なんかも教えてもらったのかもしれない。
