初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
「これも、これも、これも。……てか、このスケッチブック、全部ニナの写真を絵にしたものなんだけど、それくらいオレにとっては衝撃だったってこと。ニナの写真の絵を描きたくて、すぐに美術部に入部してさ。最初は〝オレが絵なんて〟って部員のやつらに遠巻きにされて、誰も近寄ってくる人はいなかった。だけど、どうしても描きたかったから。知識もないのに部員の見よう見まねで絵筆を握って、何枚も何枚も、それこそ、がむしゃらに描いた」


パラパラとページをめくって見せてくれた絵は、どれもがわたしの写真を絵にしたものだった。

たった一度見ただけの、なにも想いが込められていないあの写真が、百井くんの手で水彩画として蘇っていた。

それこそ最初は、お世辞にもうまいと言えるものではなくて。

でも、ページをめくるごとにタッチも色使いもどんどん上達していくのが、素人目にもよくわかる。

〝がむしゃらに描いた〟と言ったように、本当にがむしゃらだったんだろう。

印象に強く刻まれて、ただただ再現したくて。

部員たちに遠巻きにされながらも、百井くんはきっと、夢中だったんだろうと思う。