そう言って、ふんわりと。
今までに見たこともない柔らかな表情で笑う百井くんに、わたしは言葉が出てこなかった。
あの写真は、『仁菜もなにか出せ』と父に言われていやいや撮った写真だった。
被写体なんて誰でもよかったし、なんでもよかった。
写真を撮ったときは、たまたま川べりをとおりかかったところに幼い兄弟がいたから撮らせてもらっただけの、たったワンカットのものだった。
面倒くさいし、適当でいいか。
本当にそれだけで。
ただただ、それだけで。
「……ごめん、百井くん。わたし、あの写真に気持ちなんて全然込めてないよ。わたし、百井くんにヒーローだなんて思ってもらえる資格……ない」
熱くなる頬を隠すようにうつむき、ひざの上に乗せた手をきつく握る。
パンツを晒してしまったり、百井くんののど元に胸を押し付ける形で床ドンしてしまったり。
人生でこんなにも恥ずかしい思いをすることってあるんだって何回も思ってきたけど、今回のこれは、その比じゃない。


