「百井くん……」
「だから、写真展があるたびに『momo』の写真と、本人がいないか見に行ってたんだけど、あの写真以来、なぜか新しい写真が展示されなくなって。店の人に聞いたら、写真はやめたらしいって聞かされて。隣町にある写真館の娘さんらしいけど、なんでも、親父さんが何かヘマをやらかしたせいで撮りたくなくなったらしいとかでさ。さっきの二ナの話を聞いて、ようやくニナが『momo』なんだって確信できた」
それから百井くんは、「でも、怪しいなと思うところはたくさんあったんだ」と言う。
「ニナの名字、〝百〟ノ瀬だし、家も写真館だった。ニナの町には写真館はひとつしかないから、ほぼほぼ確信はあった。写真が好きじゃないのもそうだし、でも写真部だし、全然乗り気じゃないけど、コンクールにも出すって決めて、被写体を探してる。実際、撮った写真も勉強してる感じだったし、なにより、オレと同い年だって聞いてたから」
「……そ、そうだったんだ」
「オレ、大げさなんかじゃなく、ニナのあの写真に人生変えてもらったと思ってる。じゃなかったら、あの写真と同じ絵を描きたくて水彩画なんてはじめなかった。今、オレの手に傷がないのは、全部ニナのおかげ。だからニナは、オレのヒーロー」
「……」


