中1といえば、多感な時期。
親の離婚も、急に名字が変わるのも、その頃の百井くんにとっては大きなストレスだっただろうし、周りの目だってもちろん気になっただろう。
それを思うと、迂闊に相づちを打つのはどうしても躊躇われて、天井の一点を見つめる百井くんの横顔にかける言葉が見つからなかった。
ただ、そばに行きたいと思う。
けれどそれだって、百井くんがどんなふうに感じるのかが怖くて、結局は指の1本だって動かせなかった。
「そういうわけだから、2学期からは、名字が変わったことでクラスの中でのオレの立ち位置も変わった。今はこんなんでも、昔は華奢だったから。強いヤツにはあっさり負けるし、なにも言い返せないし。ほんと、散々」
そんな中、まるでそのことを懐かしむような口調で百井くんが続けた。
悲観的に聞こえないのは、もしかしたら、わたしが彼の〝ヒーロー〟だからだろうか。
その意味もよくわからないまま、そうであったらいいなと、わたしは思う。
「そこで登場するのが、母さんやオレのヒーローになるニナだ。その当時のオレは、弱かったくせに吹っかけられたケンカは全部買ってた。そしたらマジであっという間に強くなって、中1の終わりには、オレに親の離婚のことを言ってくる奴は誰もいなくなった」


