そりゃ、話してくれたほうがいいに決まっている。
百井くんだって、それを話すために、わざわざここまでわたしを連れてきたんだから。
でも。
「……百井くんさ、ちょっとオーバーに言いすぎだよ。そこまですごい存在じゃないよ? わたしなんて」
わたしの中でのヒーローの定義は〝自分の内側に大きな変化をもたらすもの〟だから、その言葉の重みに、ただただ萎縮してしまった。
けれど百井くんは、そんなわたしに気を留めるふうでもなく、ただ面倒くさそうに「いいから聞けよ、話したいんだから」と言うと、ベッドにごろんと仰向けになり、頭の下で手を組んで。
それから、ゆっくりと話しはじめた。
「オレの両親、オレが中学1の夏に離婚したんだ。前は澤村って名字だったんだけど、夏休み明けから百井に変わって、それがマジで苦痛だった」
「……」
仕方なしにつき合おうと思ったものの、出だしの言葉を聞いて一瞬で息が止まってしまった。
〝お父さん〟という、もうひとりぶんの生活感がやけに感じにくい家だなとは思っていたけど、そういうことだったのか、とそこでようやく納得する。


