普段、教室で聴いているのはきっとこれなんだろうなと合点がいって、ジャケットはほとんど見えなかったけれど、ちょっと得した気分になった。
そんなことをしつつ、待つこと数分。
「お。やっと見つかった」
「ほんと?」
「おう」
目的のものが見つかったようで、百井くんはそれを手に取りながらわたしを振り返った。
彼の手にあるのは、A4サイズのスケッチブック。
一目で春にわたしの頭に直撃したものよりだいぶ古めかしい感が見て取れるような、年季の入ったものだった。
わたしが座る勉強机まで来た百井くんは、机の上の散乱物を適当に端によけると、無理やり作った真ん中のスペースにスケッチブックをそっと置く。
外見こそ年季が入っているけど、ほかのものとは格段に扱い方が丁寧で、それだけで彼がとても大事にしているものだということがうかがい知れる。
「だいぶ古そうだよね。いつ頃のもの?」
「中2。絵なんて授業でしか書いたことがなかった頃、偶然とおりかかったカフェである写真を見て、無性に絵が描きたくなって描いたんだ」
「それとわたしと、関係があるんだ?」
「そう。だからニナは、オレのヒーロー」


