少女漫画みたいなとびっきり甘い恋に憧れているし、見た目はちょっとアレだけど料理だって不味くはない。
それなのにヒーローって、なんで……?
「ニナ、見せたいモンがある」
自分の胸の、百井くん談だと意外とグラマラスらしい膨らみに手を当て、わたし女の子だよね?と確認していると、その百井くんから声がかかった。
どうやら晩ご飯のメニューの相談が終わったらしく、こちらへ向けて手招きしながら、そこから家のほうへ入れるのだろう、暖簾をかき分けてわたしを待っていた。
そこでふと、そういえば、ここに連れてこられた理由をお母さんに聞きそびれていたっけなと思い出す。
けれど、百井くんが言う〝見せたいモン〟を見れば謎もすべて解けるだろうと再び思い直したわたしは、よしと覚悟を決めて暖簾をくぐることにした。
乗りかかったなんとやら。
しっかり見せてもらって、百井くんからちゃんと理由を聞いて、なぜわたしがヒーローであるかということも含めてばっちり教えてもらおう。
そして、ご飯をご馳走になったら即帰ろう。
それから間もなくして、百井くんに「ここ」と言われて通されたのは、2階に上がってすぐの部屋だった。


