その質問はお母さんに向けられたものだったのだけど、いかんせん言葉足らずな百井くんのこと。

わたしは心で、さっき自己紹介しましたけれども!?と激しいツッコミを入れざるを得ない。

けれどそこは、さすがは産みの親。


「もしかして……夏樹のヒーロー?」

「あたり」


質問を理解した上で、あっさりと正解までしてしまい、わたしは〝血〟というものは濃いものなのだなぁ……と妙に感慨深く納得した。

……ていうか、ヒーローってなんですか?


「今夜はご馳走にしてくれ」

「よーし腕を振るっちゃうわよー」

と、勝手に盛り上がりはじめた親子を視界の端に捉えつつ、いよいよわたしは〝女子〟というカテゴリーにすらはまらなくなってしまいつつある自分に激しく動揺しはじめる。


そりゃ、言葉遣いも普段の生活態度も、女の子然としたものとは遠いかもしれない。

だけど、わたしだって一応、それなりに女の子な部分は持ち合わせているつもりでいる。

人並みに身だしなみには気をつけているし、ハンカチ、ポケティ、絆創膏も常備していて、なにかのときにスッと出せるくらいには女子力はあるはず。