うちの母は、丸顔でおっとり、身長も体型も普通の、そこらへんにいるただのおばさんだ。
対する百井くんのお母さんは、美容師という仕事柄もあるのだろう、髪型からメイクから服の着こなしから、どれを取ってもハイセンスで、ミセス雑誌の表紙を飾ってもおかしくないくらい、お美しかった。
と、そこで、ある重要なことを思い出したわたしは、再び彼のお母さんへ向かって腰を折る。
「……あの、わたし、彼女とか、そういうんじゃなくて。紛らわしくてすみません、言い忘れちゃって……」
「あら、そうなの?」
屈託なく向けられた質問に、顔を上げて小さくうなずく。
友だちです、とか、クラスメイトです、と説明したほうが自然なんだろうけど、それはどうしても躊躇われて。
百井くんの口から直接それらの言葉が聞こえたなら、潔く友だちとして振る舞おうとは思う。
だけど、自分で言うのはやっぱり抵抗があって、なんとも曖昧な自己紹介になってしまった。
「それよりこの子、誰だと思う」
すると、世間話の時間すら惜しいという感じで百井くんが会話に割り込んできた。