「ニナ、今日はうちで晩飯」
「食っていけと!?」
「泊まってってもいい」
「ああああんたバカじゃないの!?!?」
けれど、次に発せられたとんでもない発言によって、わたしは恐怖を通り越して戦慄した。
なにが悲しくて、実結先輩が好きな百井くんの家に、百井くんのことをうっかり好きになってしまったわたしが、晩ご飯をごちそうになって、ついでに泊まらにゃならんのだ!
本物のバカかあんた!
伝えるつもりはないけれど、これでもわたし、あなたが好きなのよ!?
それなのに、知らないとはいえ、こんな仕打ちあんまりだ……。
けれど当然、そんなわたしの心中なんてちっとも知る由もない百井くんは、大声でバカ呼ばわりされてもどこ吹く風で、まったく耳に入っていない様子。
相変わらずわたしの腕を掴んだまま歩幅をぐんと広げただけで、べつにスタイルもよくないわたしは、股が裂ける思いで歩かされるだけだった。
……それでも、こんなとんでもない状況下にあっても、どういうわけか胸が高鳴ってくるから、恋って厄介だ。
放課後の遅い時間。
人気のない旧校舎。


